対馬
晴れた日には朝鮮半島が見えるという対馬は、古来、アジア大陸・朝鮮半島と日本を結ぶ重要な航路として、また文化の導入口として大きな役割を果たしてきた。島のいたる所に文化の交流を物語るおびただしい数の遺跡や遺物が残され、朝鮮伝来の仏像は島民のあつい信仰をあつめている。
能登
「万葉集」でも名高い、熊来の入江から熊木川を遡って行くと、「延喜式」にも見える久麻加夫都阿良加志比古神社(熊甲神社)がある。えらく長い社号だが、久麻はは高句麗のコマに通じ、朝鮮風の珍しい仏像を祀っている。(中略) 地元の人たちからは朝鮮神様と呼ばれる当社では、毎年9月20日に古来伝われた「お熊祭り」(国無形文化財)が行われる。
岡山牛窓
牛窓は瀬戸内海に面し、周りを大小の島に囲まれた天然の良港として古くから知られている。ここ牛窓紺浦には奇妙な踊りが伝わっている。それは「唐子踊り」といって、毎年疫神社の秋祭りに奉納される踊りである。色彩鮮やかな李朝風の独特の衣装を纏った2人の童子が肩車に乗って登場し、囃子方の小太鼓や横笛の演奏と意味不明な歌詞に合わせて対舞する、まことに不思議な踊りである。(中略)この浦が通信使節の寄航地だったことと、通信使節の一行に童子が加わり楽手むたちの鼓笛にあわせてやはり対舞していたという。
近江蒲生野
蒲生平野の中央に位置する鏡山の山裾に、新羅国の王子・天日槍を祀る鏡神社がある。天日槍は制陶や金工技術を携えて新羅から渡来し、播磨から近江に移り、やがて若狭を経て但馬に定住したとつて伝えられている。近江国の鏡谷の陶人は天日槍につき従ってきた人々といわれ、(中略)鏡神社の祭礼には、鏡の集落の人たちが神供を携えながら渡りをし、奉納する。
大和飛鳥・河内飛鳥
日本人の心のふるさとと呼ばれる飛鳥は、また渡来人たちが早くから本拠地とした土地でもある。蘇我馬子の仏教帰依によって建立された飛鳥寺は、朝鮮からの技術者たちの力を得て完成した最初の僧寺である。何度なく飛鳥路を訪れたが、ここは見るところではなく、過去をしのぶところであると思えた。